ビリビリ
秋冬は好きです。何故なら誕生日があるから。ファッションが好きだから。冷え澄んだ空気が好きだから。
でも静電気は嫌いだ。
仕事中などたまらない。
あっちでビリ、こっちでビリ。いちいち生娘のように「あっ」と驚いてしまう。
対物ならまだしも、対人だともっとたまらない。私がすこし、ほんの少し触れてしまっただけで、ビリ。
「あっ、ごめんなさい」
「いえいえ、こちらこそ」
と、狭い通路を行き来する時のような恐縮が顔を出してくる。
そう、私の正体は電気鼠だったのです。
この電気鼠にはちょっといいことがあって、それというのも、上司のところへ書類を手渡しに行く時に「ビリ」とやってしまい、舌を出しながら「ごめんなさい、静電気、この時期私ったら」と弁解すると、この堅物な上司も「いや、いや、いいとも、いいとも」と穏和な顔にさせてしまう。
席に戻って隣の席の同僚に「また静電気、やっちゃった。でも課長は怒らなかったよ」と報告することもできる。
嫌いなはずの静電気を、好きになってしまうのだ。
しかし、やはりコントロールはできないといけないのではないか?
用を足そうと扉の把手に触れてビリ、ファックスを送ろうとしてビリ、受領印を押そうとしてビリ。ビリ、ビリ、ビリ…。
電気鼠はそろそろ自身の電力にスイッチを取り入れないといけない。面倒くさがりなので、やらない。そして今日も、ビリ、とやってしまうのだ。